好きだけどね、新宿。

東京ネジ、作家兼女優、佐々木なふみちゃんより。
『姪を連れて横浜ズーラシアにいきました。ズーラシアのトラが上野より格好よく見えたのは気のせいでしょうか?』
とのこと。
3連休でしたね。一体なんの日だったのでしょう?土日も祝日も関係無い生き方をしている俺様は『〇〇の日』というのにうといです。
3連休最終日の月曜日(2/11)。知人のN氏から『茶、飲まない?』と誘いがあった。
で、新宿へ繰り出した。信じられない人混みだった。
17時にN氏と落ち合う。『スゲー人混みだねー』と俺様。『3連休最後の日だからねー』とN氏。
『茶』と言ったら本当に『茶』で。まぁ久しぶりに逢ったこともあり、喫茶店でコーヒー飲みながら、お互いフツーに近況をダベる。
フツーにサラリーマンのN氏(タメ)は『最近会社の上司に説教されて凹んでる』と愚痴る。
俺様は俺様で、芝居の話しをしたりする。愚痴などは言わないが、去年の表現活動の反省などを言ったりする。
『いちいちなんかやっても正確な点数が結果に出るワケじゃないから、自分の中でハードルあげてやるしかない』と言うとN氏は『大変だねー』と眉をひそめた。本当に大変だと思ってくれてるようだ。
『人間関係にも悩んだ時期があって‥‥‥バランスばっかり考えてると、本業の表現がおろそかになる』
と言うと『そっかぁ〜〜〜』と心底同情しているような顔をした。
本当はそんなに悩んでいるワケでは無いが、『浮き世離れしている者にも悩みがある』とアピールして、N氏の気持ちを軽くしようとしたのだ。
リンクされたりしたら、それはそれで負担である‥‥‥
話題を変えよう。サーフィンの話しをした。実はN氏はサーファーなのだ。
『板とか欲しいんだけどねー。高いでしょ?ボード持ってんの?』と聞くと
N氏は“そんなの当たり前じゃん”と言った面持ちで『持ってるよ』と答えた。
『いくらした?』と俺様。『はちごー』とN氏。『8千5百円?』と言うと、
“何をバカなことを言いやがるこの豚が‥‥‥”と言わんばかりの顔で『8万5千円だよ!』と言った。
『え‥‥‥!???8万て‥‥‥だって板(っきれ)でしょ?そんなすんの?板(っきれ)が?』
『んー、つーかいい板はもっとするよ。10万とか』とN氏。
ナメてた。本格的にやったら金かかんだな、サーフィンて‥‥‥板なんて1〜2万で買えると思ってたよ。
まぁそんなどーでもいー会話が一時間弱続き、『紀国屋でもブラブラすっか』と、外へ出る。
紀国屋の1Fにお香なんかが売ってる店があってN氏が竹の香りのスプレー式の液体インセンスを手にとって『ほら、こんなのがあるよ』と手の甲に噴射して、両手の甲を擦り合わせた。
『え?それってそうやって使うもの?』と俺様も真似する。
N氏が“オマエは香水なんかつけたことないんだろう”とでも言いたげな顔で
『その甲を首元にこすりつけるんだよ』と言うので言われるがままにやる。
『あぁいい匂いだ』と手の甲を嗅ぎながらN氏。本当に竹のいい香りだ。うん。なかなかいいんじゃない?買おうかな。注意書きを読む。
『◆ペット、人体には噴射しないで下さい◆皮膚についた場合は石けん等で洗い流して下さい』って書いてある‥‥‥部屋に吹き掛けるやつじゃないか。
その旨をN氏に告げると、N氏は慌てた様子もなく、注意書きを読んで『ほんとだ』とだけ言った。
でもN氏は細かいことは気にしない。サーファーだから(笑)。
いいの?いいなら‥‥‥いいけど。まいっか‥‥‥とN氏に同調した。N氏がいなければ、即座に石けん等で洗い流している俺様である。
テスターを洗い流すことなく、そのまま1Fの新刊売場へ。30年前の東京の写真集を見つけた。
『新宿駅南東口』という写真があって、京王デパート以外、石畳の階段と公衆便所と横丁入り口、みたいな写真で、現在のしょんべん横丁的な情緒をたたえる写真だった。現在のどのへんなのかさっぱりわからなかった。
『これどのへん?』とN氏に聞くと、公衆便所らへんを指差して『GAP』と言った。
よくよく見ると、石畳の階段の横っちょにまた石畳の階段があるのだが、階段と階段の間にはぽっかり空間が出来ていて、酔っ払いが落ちて死んだらそのまま発見されないのではないか‥‥‥という闇があった。
『こんな無駄な空間、今の新宿無いな』と思った。
『階段の横っちょに階段』というのもよくよく考えると間抜けだ。
そうだ。今の新宿って隙が無いな。渋谷よりも様々な人種を迎合している新宿なのに、人種の坩堝の街なのに、『いるべき場所』を時間割りで決めないと、人並みに流されてしまいそうだ。
『ぽっかり出来た何でもない空間』が無いから落ち着かない‥‥‥。
この15年でもすっかり変わってしまったような気がする。
しばらく本を見て、『20時までにクリーニングに出したものを取りに行かないと』というN氏と東口で別れる。19:00。
平日に比べればアルタの周りも東口周辺も混んでいた。が、目の眩むようなごった煮状態の夕方頃よりは明らかに人が減っていた。
別れ際、N氏と『減るねー(笑)。皆田舎から出て来たんだねー。帰ったんだねー(笑)』と笑い合う。
新宿はどんな人種も迎合する完璧な街である。その完璧さが、どんどん隙間を埋めていくのかもしれない。
そしてみんな“完璧”が好き。“隙間”だらけの田舎者は心踊らせて、完璧な街、新宿を観光したがるんだろうな。“隙間の有り難さ”を感じず‥‥‥‥。
N氏と別れた後、しょんべん横丁(思い出横丁)に行った。なんとなく、あの写真集の名残を残す雰囲気を見て落ち着きたかった。
しょんべん横丁の共同便所が新しくなっていた。綺麗すぎてそこだけがういていた。さっそくここも隙間が埋められていた‥‥‥。
つるかめでソイ丼を食べた。あそこの水場近くのカウンターで食べたことのある者ならわかるかもしれないが
『そんなんで本当に洗剤落ちてんの?』という雑な流れ作業を目の当たりにしてしまう。ある時それが嫌でしばらくつるかめは控えよう‥‥‥とさえ思っていた俺様であるが、
その雑さが今求めてる“隙間”と同義のような気がして、敢えてつるかめに入った。敢えて水場前のカウンターに座った。
いつゴキ野郎が出てきてもおかしくない風情のつるかめで、ソイ丼をたいらげていると、さっきスプレーを吹き掛けた手の甲の部分がカサカサして、ピリっと痛んだ。
完璧から遠ざかった様な気がして、即座に石けんで洗い流さなかったものぐさに満足すらした。
N氏から『今日はありがとう』というメールが来た。
『こっちこそありがとう』と思った。
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